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窒素分子スペクトル

水素やヘリウムスペクトルなどの簡単なスペクトルはかなり突っ込んで学習したね。今回は窒素についてちょっと見ていきましょう。窒素って非常になじみがあるから、学習することはとっても面白いとおもうの。

まず、下に示したエネルギー図を見てみよう。水素やヘリウムなど軽い原子と比べると、だいぶ複雑になってるね。図の上のほうを見ると、窒素イオンの分子についてのエネルギー図も えがかれているようだ。窒素分子も窒素イオン分子も、エネルギーポテンシャルが谷になっている箇所があるから、安定して分子が存在しうるというのが分かる。さらにN2の基底状態より2.3eVほど上にN2-の分子があるね。でも、これは実は不安定で、電子がくっついてマイナスのイオン分子を形成したと思ったらすぐに電子が離れていってしまい、中性の窒素分子に戻ってしまう。結局負イオンを生じることにはならず、電子と中性分子の非弾性衝突とみなされる。



下の図を見るには、flashが必要です。さらにActive Xを有効にしてください。図が見えたら、右クリックしてズームインをすることもできるよ!

空気中や窒素中でよく見れる遷移ってどんなのがあるの?

うむ、B→Aの遷移がその一つ。第一正帯(First positive system bands)と呼ばれている。これは分子から分子への遷移だから、帯スペクトルとしてかなり広い範囲で見られる。この遷移は500~800nmじゃよ。ばらばらになった窒素原子が再び再結合する際に、この遷移をたどるんじゃ。たとえば、5Σg+の軌道に入りながら窒素原子どうしが近づいていき、BΠgの中でも比較的振動成分の大きいv=11軌道に乗りかえる。そして、それがAΣu+のv=7の軌道に入ったりする。こうしてでてくる光は、580.4nmの黄色の光を発することになる。もちろんこの第一正帯の遷移は幅が広いから、赤色に光る遷移もあるぞ。

第二正帯(Second positive system bands)と呼ばれる遷移もあるよ。C→Bの遷移じゃが、今回これは、エネルギー図の中で紫色で示しておる。フランク・コンドンの原理(分からない人は、水素原子のスペクトルの巻を見てね!)により、基底状態の窒素分子は電子と衝突の結果、Cのレベルに上がることが多い。そしてそれはBのレベルへと緩和する。分子としての振動がv'=0からv"=0の遷移C→B(0,0)だと、337.1nmの光が観測される。これは紫外線じゃから見えないね。ほかには380nm(v'=0,v"=2)などが有名じゃ。(注意:v'は上の準位、v"は下の準位として使います。)

第一負帯(First negative system bands)と呼ばれるものもあるよ。これは窒素分子イオンのB→Xの遷移じゃ。391.55nm (0,0), 428nm (v',v")=(0,1) (注意:v'は上の準位、v"は下の準位として使います。)などがある。後者は青紫色の発光となり、オーロラでよく見ることができるよ。



次は準安定状態について見てみよう。A3Σu+がそれじゃ。基底状態の窒素分子に衝突する電子のエネルギーが弱ければ、一番低い励起状態であるA3Σu+のv=4に励起されたりする。この励起のためには6.2eV程度あればよい。いったん励起された窒素分子は、このままのレベルで少しとどまることが可能じゃ。ここから下のレベルに落ちるには、電子のスピンの変換をともなわなければならない。いわゆる準安定状態じゃ。寿命は2秒もある。これは原子や分子の世界ではかなり長い方じゃ。拡散や衝突によって失われる時間というのは、これよりもずっとずっと短い時間じゃ。

最後に窒素の典型的なスペクトルを見てみよう。これは、数Torrの圧力まで下げて、窒素を放電させたときのスペクトルじゃ。さっき学習した第一負帯、第一正帯、第二正帯すべて見えるね。

窒素にはまだまだ物理の面白い謎が隠されているんじゃないかな。ぼく、記号の意味もまだ把握しきれていないよ。三重項、一重項の違いならLS結合の巻で学習したんだけど。もっと勉強して深く知れたらいいな~!


うむ、そうじゃね。ところで、今回窒素分子スペクトルで出てきた三重項、一重項は、LS結合で出てきたものとちょっと違うから気をつけてほしい。LS結合は単原子分子の話で、窒素のような二原子分子の場合には、Λ(ラムダ)-S結合という。これらの記号についてflashムービーでくわしく解説したいところじゃが、作者が時間がなくて忙しいって言ってるから、ちょっとお預けじゃ。ふぉっふぉ。